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知恵

“足す”人事制度で、
離職率が28%から4%前後に
“足す”人事制度で、
離職率が28%から4%前後に

[ 知恵をひらめいた人 ]

サイボウズ株式会社
代表取締役社長 兼 チームワーク総研所長 青野 慶久さん

サイボウズは、グループウェアの会社です。私がサイボウズの社長になった頃は、ITベンチャーらしく、徹夜の会議もするし休日出勤もある、いわゆるブラック企業で、離職率が15〜20%くらいでした。当初はそれでもいいと思っていたのですが、2005年に離職率が28%を超え、1年後には4人に1人が辞めるという状況になると、採用コストと教育コストがかかるなぁと思い、人を辞めさせないためにはどうすればいいかを考え始めました。

そこでたどりついたのが、「公平は捨てる」という考え方です。社員それぞれの要望・わがままに耳を傾け、個性を尊重した人事制度をつくりました。人事制度は変えるものではなく足すものだ、と働く時間も出勤日数も自由にしました。それぞれが「働き方の宣言」を行い、お互いがどこでいつ働いているかを把握しています。

例えば、サイボウズで週4日働いて、ほかの日は農業をしたいという社員がいました。尊重したところ、サイボウズの製品である「kintone」を活用したIOT農法で成功し、彼に教えを請うために全国から人が集まったのです。副業によって先進事例を作り、人脈を広げてお客さんを作ってくれて。その結果、「kintone」が売れたんですね。

また、ある社員は、ご両親の介護をするために実家のある岡山へ帰りたいということでした。岡山での在宅勤務を提案したところ、受け入れてくれました。彼女は、岡山出身で人脈があり、彼女を応援したいという地元の人も多い。その結果、岡山での案件の受注率がぐっと上がったのです。

こうして働き方の多様性を認めていったところ、離職率が5%を下回るようになりました。さらに、リーマンショックやグーグル社のグループウェア市場参入があったにも関わらず、売上・利益は上がりました。社員それぞれの要望・わがままに耳を傾け、応えることで、社員が会社を好きになってくれた上に、チャレンジ・提案してくれる雰囲気までもが醸成されるという驚きの結果が生まれたのです。
(2019年3月15日 前橋市働き方改革推進セミナー講演より)

サイボウズ株式会社 代表取締役社長 兼 チームワーク総研所長 青野 慶久

1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任。2018年1月代表取締役社長 兼 チームワーク総研所長(現任)
社内のワークスタイル変革を推進し離職率を7分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。また2011年から事業のクラウド化を進め、売り上げの半分を超えるまでに成長。総務省、厚労省、経産省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。
著書に『ちょいデキ!』(文春新書)『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』(PHP研究所)がある。

サイボウズ株式会社HP:https://cybozu.co.jp/

ライター

楯友紀

Tate Yuki

市民ライター