issue+design

社会の課題に、市民の創造力を。

BOOK SHOP 無用之用 オープンにあたり

2020年6月、issue+designは「一見、無用に見え短期的に役に立たない知識や書籍にこそ本質的な価値がある」をコンセプトとした新しい形態の本屋をオープンします。

「すぐには役立たないが、頭の奥底に留まる知恵」「ある時ある瞬間、他の何かと出会うことでつながり、共鳴し、未来を切り拓く新しい着想を生み出す知恵」を無用の知と定義し、難問あふれる現代において、人々が互いに共感し、アイデアが生まれる知の交差点としての場所を目指した本屋です。

共同店主として名を連ねる、issue+design代表の筧と、異色の経歴を持つ片山。二人の出会いから本屋を立ち上げるまでのエピソード、無用之用のこれからについて、思いを聞きました。

"おもしろい匂いがする" ふたりの出会い

—共同店主であるふたり。どのようにして出会い、お互いにどんな印象を持ちましたか。

片山淳之介(以下、片山)
僕が当時働いていた、三鷹にある林檎専門店の店舗で会いました。少ししか話していないけど、おもしろそうな人だな、ずっと笑顔の人だなと思いました。

筧裕介(以下、筧)
その時のことは、よく覚えてます。
オフィスを神保町に移転して、書類や工具を入れるためにりんご箱を使おうということになって、仕入れに行きました。

片山
その後、僕が林檎専門店の神田猿楽町店をスタートした時は、たまに筧さんをすずらん通りで見かけました。お店にも来てくれましたよね。


そうですね。
淳さん(片山)のことは、おもしろいビジネスをしてる人だなって思っていましたね。

片山
徐々に挨拶する機会が増えて、会うたびにおもしろい匂いがするなあと感じていました。いろいろなお客さんを見てきたので、おもしろさは気配でわかります。


最近は、自分って平凡だなあっていうのが悩みですけどね(笑)。

片山
筧さんの周りにいる人たちは、笑顔がみんな個性的ですね。生々しい笑顔で、つくり笑いの人が一人もいないな、と感じます。

日本一の本の街、神保町でのチャレンジ

—issue+designは神保町にオフィスがありますが、この場所で本屋を始めることになったきっかけや、立ち上げにあたってのエピソードを教えてください。

片山
神保町の焼き鳥屋で、筧さんと飲んだのが始まりです。その時、僕は(林檎の)お店を既に閉じていました。でも、自分としては、この神保町でもっといろんな人と出会いたいという気持ちがあって、まだ神保町にいたかった。

何かできないかなと考えていたときに、筧さんと飲んでいるうちに、ぽんっと「本屋でもやりますか」っていう話になりました。「本の街でなにかやりたい、うーん、本屋でもやりますか?」ってどっちがか言って、すぐに「やりましょう!」と賛成した形です。 


本屋以外の選択肢は話してないですね。

本屋をやりたいとずっと考えていたわけではなかったけれど、オフィスがある神保町という街とあまり絡んでいないっていうことは気になっていましたね。

片山
issue+designはデザインを扱う団体とは聞いていたけど、具体的にやっていることはよくわかっていなかったのが実際です。ただ、社会課題をデザインの力で解決する、ということは聞いていて、ずっと自分の中でもやもや感じていた課題感に近いなとは思っていました。

だから、issue+designが本屋をやるということは、本屋だけど、いわゆる一般的な本屋とは異なる、本屋というだけではないスタートがある。ここをきっかけに何かが始まるといいなという思いがあります。

開店準備中の様子

片山
本屋をやろう!となったのが2019年7月ごろだから、11か月くらいかかりましたね。

まず、もう全てが初めてのことだったから調べることばっかりでした。大変だったけど、勉強になったしおもしろかった。

早くオープンしたかったけれど、新型コロナウイルスの流行もあり、準備も滞り、オープンが遅れてしまいました。でも、その分いまから余分に楽しみたいという気持ちが大きいです。


去年はバタバタしていて全然記憶にないなあ(笑)。

今もまだ確信は持ててない感じはありますね。もっと本をちゃんと選ばなきゃいけないっていう思いがあったりして。ちゃんと、というのは、もっと濃くしたい。

片山
そこは同じ気持ちです。もっと濃く、マニアックな選書にしていきたい。

「一見、無用に見え短期的に役に立たない知識や書籍にこそ、本質的な価値がある」

—店舗名であり、全体のコンセプトでもある「無用之用」はどのように決まったのでしょうか。


「無用之用」というコンセプトは、焼き鳥屋の段階からありましたね。

片山
「すぐには役に立たないけど、じんわり後から効いてくる」っていう。自分の中でも、日々のテーマにあったので共感しました。

本屋のつくりも、いわゆる通常の本屋にあるカテゴリー分けをしているのではなくて、「まいったな、なんだこれ」とおもしろがってもらえる、何かのきっかけになるようなお店になったらいいなっていう思いがスタートからありました。

アイデアが生まれる知の交差点としての場所を目指して

—構想から約1年かけてオープンとなりますが、今の思いとお客様へのメッセージを聞かせてください。

片山
始まったな、という気持ちが強いです。面白く、洗練するところをちゃんとやっていきたいなと思っています。

初めての方にお会い出来る事を本当に楽しみにしております。お店を訪ねてくれた方に何か面白いきっかけをお持ち帰り頂けると嬉しいです。


まだいろいろと、どうしようかなと迷っています。おつまみセットは1,000円でいいのかなとか、ビールはエビスでいいのかなとか(笑)。

全体的には、もうすこし色々とチャレンジした方がいいんじゃないかなと思いつつも、この場所は淳さんに任せてみた方がいいのかなという思いもあります。

僕個人としては、こんな時代だからこそ、書店というリアルな場が、書籍というが物質が果たす役割は大きいはずだと思ってまして、そこをきっちり体現できる空間にしていきたいと思っています。 

店主の一冊

筧 裕介 選書
「21世紀の啓蒙(上)理性、科学、ヒューマニズム、進歩」スティーブン・ピンカー著(草思社,2019年)

人間の知性の力により、世界は確実に進化している、幸せに向かっているということが力強く書かれていて、勇気をもらえる1冊です。漠然と流れる世の中の負の空気に飲まれることなく、未来に向けて行動し続ければ良いんだなと再確認させてもらえます。

片山 淳之介 選書
「原色の街・驟雨」吉行淳之介著(新潮文庫,1966年)

僕の淳之介という名前は床の間が抜ける程本を読んでいた父が吉行淳之介さんから付けたのですが、10代の頃に初めて読んだ時に「なんでこんな色っぽい本を書く作家さんから名前を取ったんだろう」と困惑しまして。普通は偉人とかから取るんじゃないかと(笑)。
少し時間が経ってお酒と音楽を楽しむようになった頃にフと読んでみると「何と粋でダンディーな方なんだ」と思ったんです。
今年、自分が昔イメージしたカッコいい40歳とは程遠い40歳を迎えて改めて読んでみたんですが、「粋な良い加減」の暖かさを感じました。是非皆様おつまみに一冊どうぞ。

店主プロフィール

筧 裕介 YUSUKE KAKEI

特定非営利活動法人イシュープラスデザイン代表
1975年生まれ。一橋大学社会学部卒業。東京大学大学院工学系研究科修了(工学博士)。2008年ソーシャルデザインプロジェクトissue+designを設立。以降、社会課題解決のためのデザイン領域の研究、実践に取り組む。
著書に『持続可能な地域のつくり方』『ソーシャルデザイン実践ガイド』『みんなでつくる総合計画』など。グッドデザイン賞BEST100、日本計画行政学会・学会奨励賞、カンヌライオンズ(仏)、D&AD(英)他受賞多数。2019年より慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科特任教授。

片山 淳之介 JUNNOSUKE KATAYAMA

1980年 徳島県生まれ
クラッシック音楽バーを経営する父とピアノ教師の母の長男として生まれる。
クラブの店長などを経て2010年よりフランスで自動車プロダクトデザイン業務に携わる。帰国後に林檎専門店の三鷹店に勤務し神田猿楽町店を立ち上げる。
同店の店長を経て2019年よりissue+designでの書店プロジェクトを企画。2020年4月よりBOOK SHOP無用之用 共同店主に就任。
ジャンルレスで面白い知識が出会い、新しい事が生まれるきっかけになる場を目指し、店作りに日々取り組む。

皆様のご来店をお待ちしております。