気候危機+DESIGN

interview

その11 ライフスタイル

6割を占める市民生活関連。1人年間7100kg排出

2023.03.25

2020年の日本の温室効果ガス排出量は11億5,000万トン(CO2換算)。日本は世界5位の排出大国であり、日本人の大半を含む世界の富裕層10%が排出量の過半数を占めており、日本及び日本人には大きな責任があることを基礎知識9で紹介しました。

 

また、基礎知識10で、地球人としての責任を果たすために、日本政府は2030年までに46%削減、半減という国際目標を掲げています。この11億5000万トンと言う膨大な排出量は私たちの生活とどれだけ関係しているのでしょうか?私たちの生活、ライフスタイルを変えることで、どの程度の削減が可能なのでしょうか?

カーボンフットプリント

あなた自身の生活、行動、ライフスタイルとCO2排出の関係性を理解するために役立つのが、「カーボンフットプリント」と言う概念です。

 

例えば、オレンジジュースを1本購入し、飲用し、缶を捨てたとします。このあなたの一連の行動でどの程度のCO2が排出されたかを著した図が以下です。アルミ缶や原材料のミカンの製造に18.5g、工場でのジュース製造・パッケージングに30.8g、店舗への輸送・冷蔵・販売で43.1g、購入後の自宅での冷蔵庫での保管に18.5g、空き缶の廃棄・収集に12.2g、合計123gのCO2が排出されています。この123gが缶のオレンジジュース1本の消費に伴うカーボンフットプリントです。オレンジジュースを飲むという行為を一つとっても、農地から自宅・廃棄施設まで、様々な場所でCO2は排出されているのです。

 

同じオレンジジュースでも、近所の農産物直売所で購入したミカンを搾った生オレンジジュースであれば、アルミ缶の製造や廃棄、商品の流通・販売等での排出がなくなるため、劇的にカーボンフットプリントが下がることは想像できるでしょう。つまり、私たちがどこで、どのように生産・製造され、販売されているものを、どのように消費するかによって、排出量は大きく変わりうるのです。

 

これまで、市民や企業が排出するCO2を計算する際は、自分が直接、消費するエネルギー量を用いてました。皆さんが自動車を運転する際のガソリンの消費量や家庭で冷蔵庫などの家電を使用する際の電気利用量です。先ほどのオレンジジュースの例ですと、冷蔵庫の電気利用量だけがあなたが排出するCO2となってしまいます。

 

カーボンフットプリントを用いると、市民のライフスタイルや企業が消費・製造・サービス提供するあらゆる製品やサービスの原料調達から、生産、流通、使用、廃棄までのライフサイクル(ゆりかごから墓場まで)において排出される温室効果 ガスを把握することができるのです。つまり、あなたの生活が原因で排出される温室効果ガスをほぼ漏れなく把握できるのです。

6割を占める家計消費、生活関連

国立環境研究所「産業連関表による環境負荷原単位データブック」(3EID)と総務省「平成27年産業連関表」を用いた推計 によれば、日本のカーボンフットプリントは、政府機関の活動や企業のインフラ投資などを除く全体の約6割が家計消費、つまり私たち市民一人ひとりの生活から生じているのです。

日本人一人あたり年間7100kg

日本人一人あたりのカーボンフットプリントは年間7100kgです。7100kg、7.1tと言われても、なかなかピンと来ないかもしれません。重さで言うと、軽自動車10台分に相当します。相当の量を出していることは少しイメージできるかもしれません。また、7100kgのCO2を植物に吸収してもらおうとすると、杉510本分、サッカーコート1面分くらいの森が必要なのです。

 

私たちのライフスタイルを変えることで、この7100kgを半減させることこそが、気候危機の対策そのものであり、それは十分に可能なことです。

基礎知識を紹介する連載はここまでです。11回にわたりお読みいただき、ありがとうございました。

参考資料

気象庁ホームページ
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「第五次評価報告書」2013年9月27日
環境省「気候変動影響評価報告書」2020年12月
NTT宇宙環境エネルギー研究所ウエブサイト「Beyond Our Planet」https://www.rd.ntt/se/media/index.html

 

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