「第21回国立病院看護研究学会学術集会」にてスタッフの佐藤が登壇しました。

はじめに

2023年12月2日(土)大阪府吹田市の国立循環器病研究センターで開催された「21回国立病院看護研究学会学術集会」にて、認知症世界の歩き方についてスタッフの佐藤が講演をさせていただきました。

 

認知症のある方の声から生まれたプログラム

「認知症世界の歩き方」は、認知症のある方の実体験をもとに構築されたプログラムです。看護職をはじめとする専門職の方が、認知症のある方と接する際にもっと知りたい!と思って書籍を探しても、医療や介護の立場から書かれたものが多く、「ご本人がどう感じておられるか、どんな日々を過ごしておられるのか」を知れる機会は、なかなかに少ないと感じています。
書籍『認知症世界の歩き方』はその点、100名を超える認知症のある方ご本人へのインタビューから生まれた本でもあるので、この声を一人でも多くの医療者に知ってもらいたい、という気持ちでお話をさせていただきました。

 

臨床現場で感じていた葛藤

私自身、臨床で働いていた時の経験で、いまだに忘れられない光景があります。
脳外科に入院されていた方で、認知機能に障害をきたしている方がおられ、転倒などのリスクを避けるため、抑制帯と呼ばれるベルトをしてベッド上で過ごしている方でした。
ある夜勤の日に、ご本人の元を訪れたところ、ボソッと「こんな風に縛られて。人間の尊厳を踏み躙っていると思わないか」「苦しいんだよ。このままなら死んだ方がマシだ」とお話されました。
この大切な訴えに対して、何も言葉を返せなかったこと。その言葉を聞いた上で、関わりを変えられるだけの力も持ち合わせていない自分への悔しさ。
「認知症世界の歩き方」という話は、その時何もできなかった当時の私にも伝えたい内容であったなと、思い返す機会もいただいたように思います。

 

さいごに

講演後にご挨拶をさせていただいた皆様からも現場での実践や課題感について様々ご共有いただき、大変有り難かったです。
このプロジェクトの目標は、この認知症世界の歩き方、という考え方を日本全体が当たり前にもっている共通認識としてリベラル・アーツにするということです。その実現に向けては、私たちissue+designのメンバーが全国を駆けずり回ったとしても限界があります。
この考え方を知って、少しでもいいなとも思っていただいた方。大切な誰かに伝えたいなと思っていただいた方。そんなお一人お一人が様々な場面でお伝えくださること、そのアクションによって日本全国に普及をすると信じています。

認知症世界の歩き方プロジェクトでは、こういった形で多くの方に認知症世界の歩き方をお伝えする講演・研修を全国で行うと共に、関心をもってくださったその方自身に伝道師となっていただくためのファシリテーター養成講座も行っています。

「認知症とともによりよく生きる」ための環境整備、社会づくりにご関心を持たれた皆様、ぜひご一緒いただけますと幸いです。

 

issue+design 佐藤