BASIC 01
2021.11.08
地球温暖化、気候変動、そして気候危機。あなたに馴染みがある言葉はどれでしょう?この3つの言葉は基本的に同じことを意味しています。
地球の気温が上昇することで、人類の存亡に関わる危機的状況に直面していると言うことです。本連載は、小学生からビジネスマン、おじいちゃんおばあちゃんまで、全ての人に地球が直面している「気候危機」の実態、原因、取るべき対策を理解してもらうことを目的としています。難しい専門用語はできるだけ避け、丁寧な説明を心がけます。もし、わかりにくいところ、より説明が必要なところなどあれば、遠慮なく、ご連絡ください。
冒頭で3つの言葉をあげましたが、、多数の科学領域、政治領域の専門用語が登場することがこの問題をわかりにくさを増している原因の一つです。最初に関連する言葉の定義を確認しておきましょう。必須の用語が12個あります。
地球の平均気温が長期的に上昇することを意味する言葉です。人間の存在とは関係なく、地球はその誕生依頼、寒冷期と温暖期を繰り返しており、自然変動による温暖化も存在します。しかし、20世紀半ば以降の温暖化は、自然変動では説明できず、人間の活動から生じた温室効果ガス(→後述)が原因と考えられます。また、過去の自然変動による温暖化と比べて、その速度が急激に起こっていることが問題となっています。
地球温暖化による気温上昇とその気温上昇の影響で生じた地球上の気候(熱、風、雨、雪、雷等)の変化。「地球温暖化」が気温上昇を意味する言葉なのに対して、「気候変動」は気温上昇に加えて、気候の影響までを意味する、より広い概念の言葉です。
2019年に英ガーディアン紙が「climate change(気候変動)」ではなく、「climate emergency, crisis or breakdown”(気候非常事態・危機・崩壊)」を使うと発表したことをきっかけに広がった言葉です。気候が「変わっている」のではなく、「危機」であることを、より明確に伝えるために生まれた言葉であり、近年意識的に使われています。日本でも、2020年6月に環境省が気候危機を宣言し、2020年版環境白書で初めて、「気候危機」という言葉が登場しました。
地球の気温上昇の原因となっている人間の活動によって発生する二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスなどの総称。総量の4分の3を占めるのが、二酸化炭素であり、石炭や石油の消費、セメントの生産などにより大気中に放出されます。2割弱を占めるメタンは、湿地や池、水田で枯れた植物が分解する際に発生したり、牛など家畜のげっぷにも含まれます。
ここで言う炭素とは、温室効果ガスの大半を占める二酸化炭素のことを意味します。ですので、低炭素社会とは、二酸化炭素の排出が少ない社会のこと。脱炭素社会とは二酸化炭素の排出から脱する、排出しない、排出ををゼロにする社会のことを意味します。
エミッションとは排出のことです。つまり、排出をゼロにすることを意味します。1992 年リオ地球サミットで採択されたアジェンダ 21 を受け、1994 年日本の国連大学が提唱した、いわば日本発のコンセプトです。この言葉が生まれた当初は、人間の活動から発生する排出物、つまりをゴミ・廃棄物を限りなくゼロにすると言う考え方でした。近年では、CO2ゼロエミッションと呼ばれることがあるように、二酸化炭素の排出をゼロにすると言う考え方も含みます。
脱炭素、CO2ゼロエミッションが、二酸化炭素の排出をゼロにする、無くすと言うことを意味する言葉なのに対して、こちらは、「カーボン(=炭素)」を「ニュートラル(=中立)」にすると言う意味で、ゼロにしようという考え方ではありません。石炭や石油の消費などの「人間の活動による排出量」と「植物の光合成などによる吸収量」を同量にし、二酸化炭素排出量をプラスマイナスゼロにすることを目指す考え方です。
循環型経済(サーキュラーエコノミー)とは、資源の採掘→製造→消費→廃棄と一直線に進み、無限に資源を採掘し、無限に廃棄し続ける直線型経済システム(図左)ではなく、廃棄されていた製品や原材料などを資源と捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組みのことを意味し指します(図右)。
環境負荷を減らしつつ、経済成長を目指すための新たな経済モデルとして、EU(欧州連合)中心に2015年ごろから世界中で注目を集めています。
一方、循環型社会という言葉は2000年代に登場した比較的歴史のある概念です。環境省が2007年に環境白書を環境白書・循環型社会白書と名称変更したことかわわかるように、3R(リサイクル、リユース、リデュース)により、資源の利用をできるだけ減らす、省エネ・省資源を意味します(図中)。
循環型社会は、今まで通りの資源採掘と製造が前提で、そこから生まれる廃棄をできるだけ減らすために、リサイクルやリユースしようという発想です。一方、サーキュラーエコノミーは、原材料の調達や製品設計の段階や消費(利用)段階から始まります。この段階から、その後の新たな資源の利用はできる限り抑え廃棄ゼロを目指して新たなシステム設計を行う取り組みです。販売した商品の修理や回収した製品の解体・再利用しやすいように商品を設計したり、シェアリングのように消費(利用)の仕方を設計し直すなどがその一例です。
Intergovernmental Panel on Climate Change。国を超えて各種専門家により、地球温暖化についての科学的な調査・研究・提言を行う学術的な組織です。世界中の数千人の専門家の科学的知見を集約した「評価報告書」を数年おきに発行し(最新は2021年)、気候変動の対策技術や政策の実現性やその効果、それが無い場合の被害想定結果などに関する科学的知見を提供し、国際政治および各国の政策に強い影響を与えています。
COP(コップ)は締約国会議(Conference of the Parties)のこと。一般的に、1992年に採択された国連気候変動枠組み条約(UNFCCC:United Nations Framework Convention on Climate Change)の締約国が集まる年に1回(2020年はCOIVD19の影響で中止)の会議のことを表します(生物多様性条約の締約国会議もCOPと呼ばれるため、混同しない注意が必要)。
国連気候変動枠組み条約の最高意思決定期間と位置付けられ、全ての条約締約国(21年11月197カ国・地域)が参加して温暖化対策の国際ルールを話し合います。2021年秋に英国グラスゴーに開催された会議は26回目のため、COP26。2020年までの温暖化対策の枠組みである「京都議定書」が採択されたのが1997年のCOP3。京都議定書の次の枠組みである「パリ協定」が採択されたのが、2015年のCOP21。
第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催されたフランスのパリにて2015年12月に採択された、国際的な協定。1997年の京都議定書以来、18年ぶりの気候変動に関する国際的枠組みであり、気候変動枠組条約に加盟する全196カ国全てが参加する史上初のものです。
世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つ(2℃目標)とともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(1.5℃目標)が示され、21世紀後半に人間活動による温室効果ガス排出量を正味ゼロにすることが明記されています。各国に対する排出量削減目標の策定義務化や進捗の調査など一部は法的拘束力があるものの罰則規定はありません
世界第二位の巨大排出国であるアメリカがトランプ大統領の就任により、2019年11月に離脱を表明したものの、トランプ政権を引き継いだバイデン大統領によって、2021年1月に復帰が表明され
気候変動対策は大きく、二つに分けられます。
1つ目は、気候変動が人類にもたらす影響をできるだけ少なくする「(影響の)緩和」のために温室効果ガス(GHG)の排出量を削減することです。
2つ目は、既に起こり始めている気候変動の影響(自然災害や酷暑、海面上昇など)に対して、「適応」する、この新しい時代の中で生き抜くために、我々の生活や社会システムを変革することです。
日本ではとりわけ削減のための「緩和」策が注目を集めがちです。しかし、既に影響は起こり始めており、今後さらに深刻化することは明らかなため、「適応」策は欠かせず、その影響をできるだけ小さくするための「緩和」策と共に、気候変動対策の両輪なのです。
@2021 issue+design