気候危機+DESIGN

interview

人間社会への影響

食・健康・文化・経済・災害等、人間社会への影響大

2022.09.15

気温が上昇し、猛暑が当たり前になり、暖冬が増え、四季の変化が薄らぐ。
集中豪雨が増える一方、恵みの雨が降る日が減る。
降雪量は減るものの、ドカ雪や雷が増加する。
海水温が上がり、酸性化が進み、海面が上昇する。
凍土や雪氷が減り、砂浜が削られる。
高潮・高波・河川氾濫が起き、森が崩落し、森林火災が起こる。
動植物の生息域が変わり、一部生物は絶滅の危機にさらされる。
一方で、人間に害を与えうる一部動植物は爆発的に数を増やす

こんな気候の変化、自然環境の変化は、私たち人間の生活にどんな影響を与えうるでしょうか。

以下のマップは、気候と自然環境の変化がもたらす、政治経済や市民生活に与えうる事象、その関係性を表現した地図です。
青で描かれているのが、基礎知識3(リンク)で紹介した9つの気候への影響です。
緑が、基礎知識4(リンク)で紹介した12の自然環境への影響です。
気候の変化、自然環境の変化の結果、生じつつある人間生活への影響が茶色で描かれています。

このマップから読み取れる気候危機の結果、人間社会で起きうる未来シナリオが次の6つです。
この6つのシナリオをそれぞれにフォーカスしたマップとともに紹介していきます。

シナリオ1 災害日常化シナリオ

気温上昇による豪雨・落雷・ドカ雪などの増加が日本中に大規模な自然災害を引き起こしています。特に近年は台風や熱帯低気圧による豪雨の機会が増えており、土石流や崩落による土砂災害、河川氾濫・高潮・高波による低地や沿岸部の水没により、住宅・農地・漁業施設・工場・交通インフラが損傷し、多くの被災者が生まれる災害が頻発しています。
その結果、地域の産業が衰退し、失業者や生活困窮者が増える。職を失い通勤・通学に必要な交通手段が無くなり、地域外へ人口が流出する。こうして、地域の衰退が加速することにつながっています。

シナリオ2 酷暑・水不足シナリオ

気温上昇により猛暑日が増加し、降雨日や積雪量の減少により、渇水時の河川や湖の水量が減少しつつあります。その結果、渇水時には、生活用水の不足から、取水制限が頻繁に発生することでしょう。
また、猛暑日の増加や水不足は熱中症、しいては子どもや高齢者などの死亡リスクが増加します。猛暑により、外出が困難になることで、観光業・飲食業等の地場産業の衰退にもつながります。
また、地域財政の悪化や人口減少に伴い、水インフラが老朽化し、その整備が困難になりつつあり、地域の水の環境は徐々に悪化しつつあります。

シナリオ3 食糧危機シナリオ

気温上昇による猛暑日の増加、降雨日や積雪量の減少、海水温の上昇、CO2濃度の上昇による海洋酸性化は、海と陸の生物が生きる環境を激変させています。動植物の生息域が変化し、一部生物は絶滅の危機に晒され、逆に一部生物が劇的に増加しています。その結果。従来通りの農業・漁業が困難になり、農作物収穫量や漁獲物が減少しています。河川氾濫・高波・高潮などによる農地の水没や漁業施設の被害が、一次産業の苦悩にさらに拍車をかけています。
収穫量や漁獲物の減少は食料価格の高騰、そして失業者・生活困窮者の増加につながり、地域経済に大きなダメージをもたらします。

シナリオ4 感染爆発シナリオ

気温上昇による生物の生息域の変化と世界的な都市化による森林等の伐採・開拓により、我々人類が感染症媒介生物への接触機会が増えています。また、氷河や永久凍土の融解で古代ウィルスの大気放出が危惧されています。COVID19収束後も、人類は新たな感染症の脅威に頻繁に晒されと、ウィルスと共存せざる負えない時代が、ほぼ間違いなく続くことでしょう。
自然災害よる衛生環境が悪い避難生活の大規模・長期化、地域財政の悪化による医療・保健体制の脆弱化が地域の感染症耐久力を弱めています。
感染症は高齢者や子ども、生活困窮者が被害を被りやすく、社会的弱者の生活環境が厳しさを増していくことでしょう。

シナリオ5 文化消滅シナリオ

気温上昇による猛暑、暖冬、四季の消滅、砂浜の侵食、生物の生息域の変化により、日本が誇る自然遺産・文化遺産が危機的状況にあります。
貴重な観光コンテンツである砂浜や雪景色、多様な動植物、地域の魅力の源である農作物や魚介類が消えることで、観光産業が衰退する地域も増えることでしょう。
感染症の流行や猛暑による熱中症の増加は、夏のお祭りや伝統芸能の継続を困難にします。伝統芸能は、地域の老若男女が交流する貴重な機会であり、地域コミュニティ維持に欠かせないもので、継続不能になることで地域の衰退が加速することでしょう。
日本の多様で美しい地域文化が気候変動の影響で危機にさらされているのです。

シナリオ6 格差拡大シナリオ

COVID19下の世界経済、日本経済からの教訓で明らかなように、感染症の流行、自然災害の増加、酷暑・水不足、食糧危機、こうした気候変動の影響を最も被るのは社会的弱者と呼ばれる人々です。職を失い、食べ物の確保に苦しみ、厳しい職場環境で感染症や熱中症の危険にさらされることでしょう。
一方、厳しい行動制限下で、技術が普及し、ITサービスの利用が加速することで、テクノロジーの恩恵を受け、グローバルな金融市場へ投資可能な一部の富裕層・大企業にはさらに富が集中していくのです。
気候危機は、富める者と貧しき者の格差をさらに拡げることに繋がるのです。

気温上昇による気候と自然環境の変化の結果、人間社会では、災害が日常化し、酷暑による水不足や食糧危機が頻発し、感染症の流行が進む、日本が誇る様々な文化が消滅し、さらなる経済格差の拡大が広がる。このように、気候変動は我々人類、日本人の未来へと大きな影響を与えうる危機的事象なのです。

気温上昇による気候と自然環境の変化の結果、人間社会では、災害が日常化し、酷暑による水不足や食糧危機が頻発し、感染症の流行が進む、日本が誇る様々な文化が消滅し、さらなる経済格差の拡大が広がる。このように、気候変動は我々人類、日本人の未来へと大きな影響を与えうる危機的事象なのです。

参考資料

気象庁ホームページ
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「第五次評価報告書」2013年9月27日
環境省「気候変動影響評価報告書」2020年12月
NTT宇宙環境エネルギー研究所ウエブサイト「Beyond Our Planet」https://www.rd.ntt/se/media/index.html

 

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