気候危機+DESIGN

interview

自然環境への影響

海面上昇、生物の生息域変化、森林火災など、自然環境への影響大

2022.08.29

気温が上昇し、夏の暑さが厳しさを増す。
暖冬が増え、四季の変化が薄らぐ。
集中豪雨が増える一方、雨が降る日が減る。
降雪量は減るものの、ドカ雪は増える。
雷が増加し、天候が不安定になる。

こうした、日本と日本各地の地域の気候の変化により、
海・川・水・森、そこで生きる動植物はどんな影響を受けるのでしょうか。

今回は、日本の自然環境が直面する12の変化を見ていきます。

海が変わる

気候変動の影響に加えて、人間の行き過ぎた経済活動の追求がもたらした汚染物やプラスティックゴミの流出などにより、
人類を含むすべての生命の源である海が危機的状況にあります。
ここでは、気温上昇により、海で生じている5つの変化を紹介いたします。

世界全体の年平均海面水温は+0.55℃(100年当たり換算)と長期的に上昇し続けています。また、日本近海は同+1.14℃と世界平均の2倍以上の上昇率を記録しています。
これは日本固有の特徴というわけではなく、全世界的にも、温まりやすい陸地や黒潮等の暖流の影響を受けやすい大陸に近い海域は上昇率が大きい傾向にあります。

化石燃料の燃焼などで大気に排出された二酸化炭素の約30%は海洋に吸収されます。その結果、世界の海洋で酸性化が進行しています。海水の水素イオン濃度指数(pH:低いと酸性、高いとアルカリ性を意味する)は少しずつ低下しており、世界平均のpHは10 年当たりおよそ 0.02 の速度で低下しています。酸性化はサンゴや貝類などの生物の骨格形成を困難にすることなど、海洋生態系への深刻な影響が懸念されます。日本沿岸域でも、世界平均と同程度の割合で酸性化が進んでいます。

世界平均海面水位は過去 100 年間で約 15 cm 上昇しています。水位の上昇率は最近の数十年zで大きくなっています。日本沿岸の平均海面水位はも同程度の上昇傾向です。
IPCC 海洋・雪氷圏特別報告書によると、21 世紀末(2081~2100 年平均)の世界平均海面水位は、20 世紀末(1986~2005 年平均)に比べ、4℃上昇シナリオ(RCP8.5)では 0.71 m(0.51 ~0.92 m)、2℃上昇シナリオ(RCP2.6)では 0.39 m(0.26~0.53 m)上昇すると見られ、沿岸部の海抜1メートル以下の地域では居住が困難になると予測されます。

日本の砂浜の面積は全国で約19,000haとされていますが、1980年代から1990年代にかけて約13%に当たる2,400haほどの海岸が浸食により消失しています。海岸は美しい景観やレジャーなどの役割以外にも、高波・高潮・津波被害を防ぐ防災面で大きな役割を果たしています。なお、この砂浜の侵食は、気温上昇による海水面の上昇や気候の変化の影響以上に、無秩序な開発など人間活動の影響が大きいと言われています。

1979年から2019年までの観測データによれば、北極の海氷面積は長期的に有意に減少しています。海氷の年最小面積(各年で最も海氷面積面積が小さい時の面積)は10年当たり 89万㎢(平年値の14%)と、10年で1割以上小さくなっているのです。
日本近海でも、北海道沖のオホーツク海の海氷面積も減少しています。年最大海氷面積は1971年から2020年まで10 年当たり6.1 万㎢、10年で5%強の面積が消失しています。また、冬の風物詩である北海道沿岸の流氷量も1980 年代後半以降、著しく減少しています。

森と水が変わる

陸の生物を育む森、水の環境も、海同様に危機的状況にあります。
ここでは、森の消失に代表される人間の開発・経済活動の影響が大半であるものは除き、気候変動の影響により生じていると考えられる
4つの変化を紹介します。

山火事とも呼ばれる山や森林で広範囲に渡り発生する火災、森林火災は、2019年にアマゾンやオーストラリア、2020年にカリフォルニアでと相次いで大規模かつ長期的に発生したことが全世界的なニュースとなったように、近年、世界で発生件数が増え、様々な被害をもたらしています。
その原因の一つが、気温上昇による大気の乾燥と落雷の増加だと言われています。

1時間に50mm以上と呼ばれる短期間の集中豪雨が増えていることに関連して、土石流や崩落が増え、土砂災害のリスクが高まっています。日本においては過去10年間(1998年~2018年)に実に97%以上もの市町村で水害・土砂災害が発生しています。まだ記憶に新しい2020年令和2年7月豪雨は37府県で961件の土砂災害をもたらし、過去最大クラスの広域災害となりました。

高波とは、強い風が原因で発生する高い波のことです。高潮とは、台風や低気圧により気圧の高い空気が周辺エリアの海面を押し下げ、同時に気圧の低い中心部エリアの海面が高く盛り上がる現象です。なお、津波は地震による高波を意味します
日本の高潮の発生数や大きさには長期的に大きな変化が認められないものの、高波は年最大波高が上昇している傾向が見られます。この傾向はは特に太平洋側で顕著です。
また、高波・高潮・豪雨により、氾濫危険水位を超えた河川数は2014年に83だったものが、19年には403と5年で5倍に増加しており、海や河川が人間生活をどんどん脅かしつつあるのです。

河川・湖の水量がは上下の変動が大きく、長期的な変化を定量的に把握するのは困難です。
近年は少雨の年と多雨の年の年降水量の開きが大きいことで、渇水年(少雨等により水資源が不足する年)の水資源賦存量が減少する傾向にあります。水資源賦存量とは、降水量から蒸発散量を引いた、理論上人間が最大限利用可能な水資源の量を意味します。降雨量が少ない年に、河川や湖の水量が減少し、日常生活や経済活動に必要な水資源の確保が困難な状況が起きつつあります。

生き物が変わる

気候の変化の影響により、海が変わる。森が変わる。湖・川などの水が変わる。
その結果、生じている、海と陸の生き物に関する変化が以下の3つです。

陸の気温の上昇や積雪・降水量の変化、海水温の上昇や海流の変化により、生物の生息域や栽培適地が北(高緯度)や高地などへ移動する傾向が見られます。伊豆諸島より南の海域で漁獲されるゴマサバが宮城、岩手で大量に漁獲されたり、北海道での米の収穫量が増加し、東北以南で減少したり、ワイン用ブドウの収穫適地が高地へ移るなどの現象が起き、我々の食生活、地域の基盤でもある一次産業に多大な影響が生まれつつあります。

IUCN(国際自然保護連合)発表の世界の絶滅の恐れのある野生生物のリスト「レッドリスト」には、2021年1現在約4万種が「絶滅の危機の高い種(絶滅危機種)」として掲載されています。レッドリストは、野生生物を追いつめる11の要因の一つに気候変動を挙げており、気候変動の影響を受けている絶滅危機種は、2000年には15種だったものが、2010年には1,000種を超え、2020年には4,000種を超えるなど、加速度的に増加しています。
IPCC発表のレポートでも、気温上昇が2.0℃を超えると、サンゴの生息域が99%消滅するなど、動植物が壊滅的な影響を受けると警鐘を鳴らしています。

日本を含む全世界的に昆虫の数は激減している中で、イエバエ、ゴキブリ、ヒアリ等の一部の昆虫の増加し、人間社会での被害が増える傾向にあります。また、冬の気温上昇や積雪の減少により、野生鳥獣が越冬可能な地域が拡大し、ニホンジカやイノシシなどの個体数が増加し、農作物の被害などが日本全国各地で大きな問題となっています。

参考資料

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「第五次評価報告書」2013年9月27日
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「海洋・雪氷圏特別報告書」2019年9月
環境省「気候変動影響評価報告書」2020年12月
文部科学省気象庁「日本の気候変動2020 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書」2020年12月
IUCN(国際自然保護連合)「レッドリスト(正式名称:絶滅のおそれのある種のレッドリスト2021」
気象庁ホームページ
国土交通省ホームページ

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