1.5℃以内実現のために、2030年半減 2050年ゼロが必須
2022.11.11
気候変動を 1.5℃に抑えるために設定された目標が、 2010年のレベルに比べて、2030年までに CO2 排出量を約 45%削減し、2050 年頃までに CO2 排出 量をほぼ「正味ゼロ」にする必要があるという目標です。
2030年までの45%削減、2050年までのゼロの根拠となっているのが、IPCCの報告書で示されている年間排出量の推移に関するシナリオです。
IPCCの第6次報告書では、将来の気候変動の見通しを下の5つのシナリオに基づいて評価しています。 このシナリオの見方や用語の意味はやや複雑で専門的なため、最後に記載しますので、より深く理解したい方はご一読ください。ここでは誰もが知って欲しいベーシックなことのみを記します。
まず、一番上のSSP5-8.5というシナリオは、産業革命以降、現在に至るまでの、化石燃料依存型の発展を今後も人類が継続すると言う破滅的シナリオです。平均3.7℃(最大4.8℃)の気温上昇が見込まれます。
2つ目のSSP3-7.0シナリオとは、世界各国間の対立が進み、強調して排出削減に取り組むことができず、今世紀にわたって排出量が増え続ける危機的シナリオです。平均2-3℃の気温上昇が見込まれます。
3つ目のSSP2-4.5シナリオは今世紀末までCO2排出量が実質ゼロにできず、2℃以上温暖化する。と言う中間シナリオです。
4つ目のSSP1-2.6シナリオは、パリ協定で達成を目指した2.0℃以内を達成すると言うシナリオです。このシナリオを達成するためには、2030年に25%削減、2070年代にゼロを達成することが求められます。
そして、一番下のSSP1-1.9シナリオが、COP26で世界共通の目標として強く位置づけられた1.5℃目標を達成するシナリオであり、この実現のためには排出量を約 45%削減し、2050 年頃までに CO2 排出 量をほぼ「正味ゼロ」にする必要があるという目標です。
いずれのシナリオの場合でも、今世紀半ばまでは気温上昇が続くと見通されており、2021~40年の平均気温が産業革命前よりも1.5℃上昇に達してしまう可能性は五分五分以上とされています。
出典:IPCC第六次報告書をベースに編集部作成
このシナリオの意味や数字の意味をもう少し知りたい方はこの先ももう少しお付き合いください。
まず、SSPとはShared Socioeconomic Pathwaysの略で「共通社会経済経路」を意味します。IPCCの中の未来シナリオ作成を目的としたコンソーシアムが様々な社会環境の変化を考慮して描いた社会経済のシナリオです。
SSPは以下の5つの代表的なシナリオで構成されます。
SSP1 持続可能
SSP2 中庸
SSP3 地域分断
SSP4 格差
SSP5 化石燃料依存の発展
続いて、SSP1-2.6、SSP3-7.0というシナリオ名の後半の2.6、7.0と言う数字の意味を説明します。この数字は、地球に出入りするエネルギーが地球の気候に対して持つ放射の大きさ、放射強制力を表す数字です。この数字が大きければ大きいほど、太陽光の影響で地球に大きな熱が放射され、地球温暖化につながります。逆にマイナスの場合は地球寒冷化が引き起こされます。
放射強制力2.6の場合は平均1.7℃上昇、3.4の場合は平均2.0℃上昇、4.5の場合は平均2.5℃上昇、6.0の場合は平均3.5℃上昇と予測されています。
ですので、SSP1-2.6シナリオであれば、持続可能な社会が実現し(SSP1)放射強制力2.6程度が予測され、平均1.7℃上昇が見込まれると言うことを意味します。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「第六次評価報告書」2021年8月
国立環境研究所ホームページ
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