1. 富山のもの、氷見のものを
7月24日金曜日。
新高岡に集合した「タベローネ」チーム一行は、翌日に控えた「タベローネ~海水のフルコース」に使用する食材を買い付けに、まずは滑川市へと移動しました。
今回の海水のフルコースでは、その土地ならではの材料、その土地ならではの食材にとことんこだわることで、一期一会を感じていただきたい。そんな思いで富山のもの、氷見のものをリサーチし、選択しました。
滑川市では、海水のフルコースのベースとなる「海洋深層水」を購入。販売員の方からその土地ならではの深層水の使い方を直接習い、参加者の皆さんに喜んでいただける海水のフルコースのベースが決まりました。
水道から出る様々な濃度の“うまい”深層水にした舌鼓をうち、振舞うメニューのイメージを膨らませました。
「この濃度の深層水でつくる漬けものやひものが最高なんだよ」
2. いざ氷見へ。ひみ番屋街での食材探訪
一行は滑川を後にし、一路氷見へ。
観光客で賑わう、ひみ番屋街を訪れ、フルコースを光らせてくれる食材を吟味しました。
ひみ番屋街では様々な食材が豊富にそろう
おすすめの食材を聞いたり、加工方法を聞いたりしながら、参加者の皆さんに、海を感じ、地域の魅力を味わっていただける逸品を探します。
海水のフルコース、だからといって海の幸ばかりではありません。その土地でとれた山の幸もふんだんに盛り込み、複雑な「うま味」を創造していきます。
一行で移動中「せっかくなら、つけあわせのパンも地元のパン屋さんで買おう!」ということになり向かった先が、氷見海浜植物園からほど近いBleさん。 アポなしで突然訪問し、海水のフルコースを彩ってくれる、美味しいフランスパンを、翌日焼きあげてくださることが急遽決定。こうした出会いがあって、その日限りの素敵なフルコース誕生の素地が出来上がりました。
3. その時一番おいしい海の幸を求めて
海水のフルコース、海水とともに主役を務める海の幸をお手配いただいたのは、夕方になると夜のおかずを買い求めるお客の車で店の前に渋滞ができる「角安商店」。
角安商店では、シェフと若旦那が食材一つ一つを見極めながら真剣勝負。
水揚げされた食材から、その食材を際立たせる食材まで、皆さんに喜んでいただけるための工夫や調整を、対話をしながらすすめていきました。
新鮮な食材、活気ある店内が、氷見の海の恵みを際立たせます。
旬で生き生きとした新鮮な食材
ひっきりなしに入る注文に対応する売り場
シェフと若旦那が食材一つ一つを見極めながら真剣勝負。
4. 地域の飲食店さんとの交流も
食材の仕入れに目途が立ち、一行は氷見でレストランを経営されている方々との交流のため、ひみ漁業交流館「魚々座」へ。 こちらでは、氷見の飲食業界の現況や、和洋様々な調理の方法など、幅広い意見交換を行いました。はじめましてのご挨拶にもかかわらず、あたたかく受け入れていただきました。
新しい取り組みへの期待や、氷見ならではの商習慣。
和食のルーツから、欧州の食文化など、幅広く意見交換。
シェフの説明にも熱がこもります
未来に向けて、良い連携が生まれますように、と願いをこめての記念撮影
5. 本番当日
7月25日(土)。「タベローネ」本番当日、一行は会場を提供いただいた地元で人気のレストラン「シーサイドハウスボルカノ(氷見市海浜植物園店)」に集まりイベント準備。 たくさんのレストランスタッフの協力もあって、素敵な空間ができあがりました。
厨房でも富山のもの、氷見のものが続々集まって、下ごしらえに余念がありません。ここでは嬉しいサプライズがありました。 前日ひみ漁業交流館「魚々座」で交流させていただいた、地元のレストランオーナーが、仕事着着用で急遽お手伝いに。 「見るのもとても大事な勉強なので、お手伝いがてら覗きにきちゃいました」の一言に、懐の深さを感じます。海水のフルコースという、新しい取り組みに、地元の熱視線を感じた瞬間でもありました。
シーサイドハウスボルカノ(氷見市海浜植物園店)
たくさんのレストランスタッフの協力もあって、素敵な空間ができあがりました。
厨房での下ごしらえの様子
地元のレストランオーナーが、仕事着着用で急遽お手伝いに。
6. いよいよ本番。まずはじめは「塩のアペリティフ」
海水といえば際立つのが「塩」。いきなり海水を味わうのではなく、まずは塩のうま味について敏感になっていただこうと企画されたのが、「塩のアペリティフ」です。 能登の塩、沖縄の塩、ポルトガルの塩の違いを感じたり、対比効果と呼ばれる甘味を引き立たせる塩の役割について、楽しみながら体感していきました。
好きな塩を施したカップに、甘味や酸味を感じる特製のノンアルコールカクテルを注ぎ、塩によって味がどう変化するかを参加者全員で体感しました。 おとなも、子どもも、改めて楽しく、そしてちょっぴり真面目に「塩」の美味しさや効能について、視覚と味覚を駆使して感じることで、海水のフルコースへの期待がより一層高まりました。
能登の塩、沖縄の塩、ポルトガルの塩
レモンをつけて、グラスに塩をつける表情が真剣そのものです
好きな塩を施したカップに、甘味や酸味を感じる特製のノンアルコールカクテルを注ぐ
「まずはパパが味見してみて」お子様の表情と、親御さんの真剣な表情がとても印象的
7. ついにベールを脱いだ「海水のフルコース」
滑川市の深層水を使い、氷見でとれた山の幸、海の幸をふんだんに盛り込んだ海水のフルコース。シェフが最も苦労した点は「いかに海の恵み、魚食の豊かさを感じ取っていただくか」でした。 メニューを考案するなかで、行き着いた答えが、それぞれ素晴らしい食材同士のうま味を、「海水」をベースとすることで、より高いレベルに引き上げる、という結論でした。
一品目は、「氷見の魚と甲殻類と豚肉の海水仕込み」
様々な食材が、海水によってうま味が引き出され、複雑な中にもしっかりと深い塩味を表現していきます。
「これ、いつも使っているあの食材ね」
そんな声も聞かれる中、シンプルな中にも力強さを感じる料理が振舞われました。
料理の合間にはシェフがコンセプトを説明。海水の豊かさだけでなく、海水を使うことの難しさなどもわかりやすく説明しながら、一品目に込めた思いを熱く語ってくれました。
氷見の魚と甲殻類と豚肉の海水仕込み
「これ、いつも使っているあの食材ね」
料理の合間にシェフがコンセプトを説明。
二品目は、トビウオを活用した「氷見の魚のポルトガル風オジャ 海水仕立て」。
海水のうま味をダイレクトに感じてもらおうと、試行錯誤を重ねて完成した珠玉の逸品です。海水を表現した複雑な塩味のなかに、しっかりと食材の出汁が活きている、そんな料理に仕上がりました。
ひみまつり実行委員長も「むむ、これは」と、海の恵み、豊かな魚食文化を感じる、その世界観に驚いてくれた模様です。
「氷見の魚のポルトガル風オジャ 海水仕立て」
頭で色々な味をイメージし、いざ実食。
「海だ!おいしい!」ついつい笑顔がこぼれます。
最後となる三品目は「ポルトガル風プリン 海水キャラメル」。
海水の塩味を感じるカラメルソースが、優しい甘さを特徴とするプリンの美味しさをさらに際立たせ、世代をこえて笑顔をこぼれさせる一品に仕上げることができました。
東京で仕込んだベースに、海水を使ったカラメルソースで味を調えていきます。
「おいしい!」
「おいしいわねぇ」
8. 改めて、「海水のフルコース」をご紹介
一品目 「氷見の魚と甲殻類と豚肉の海水仕込み」
二品目「氷見の魚のポルトガル風オジャ 海水仕立て」
三品目「ポルトガル風プリン海水キャラメル」
こうして、振舞う側も、お食事も楽しんでいただく側も、新しい試みとなる「タベローネ~海水のフルコース~」は、美味しい大成功のもと閉会しました。
海の恵み、舞台となった富山県氷見市の豊かな魚食文化を、世代をこえて、地域をこえて、参加いただいた方、運営に携わった方みんなが体感しながら楽しめた本イベント。
次世代に、想いとともにつなげていけたら素敵です。
「タベローネ~海水のフルコース~」イベントレポートでした。
「海水のフルコース」監修・総指揮
ポルトガル料理店“クリスチアノ”オーナーシェフ
佐藤幸二氏
ヨーロッパ、タイで料理の修行をし、帰国後、レストランのシェフ、運営、コンサルティングに関わった後に独立。オーナーシェフとして予約が取れない人気ポルトガル料理店『クリスチアノ』やポルトガルスイーツ店『ナタ・デ・クリスチアノ』の経営のほか、タイ料理『パッポンキッチン』も共同プロデュース。全国各地の漁協関係者に幅広いネットワークを持つほか、食を通じて、次世代に魚のおいしさや食の大切さを伝える伝道師の横顔も持つ。
ポルトガル料理&ワインバー“クリスチアノ” http://www.cristianos.jp/
2015年8月27日
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